覗き

田代まさしの再逮捕はショッキングだった人も多いに違いない。
スカートの中を盗み撮りして逮捕され、あれだけ反省して芸能活動も休止し、ようやく復帰したばかりである。
しかも今度はアパートの風呂覗き、行為は遥かにエスカレートしている。

その後覚醒剤所持で再逮捕されたが、芸能界にドラッグなんて当たり前、別にそっちはどうでもいい。
それにドラッグの話はこれまでもコラムで何度か取り上げたし、日本という国が変わらない限りドラッグに対する社会の認識はこれまでと変わらないだろうし、別に無理に変える必要も無い。
「不運だったね、覗きで捕まらなかったら覚醒剤はばれなかったのにね。」
って思うくらいだ。

問題は「覗き」である。

今まで私のコラムを愛読してくれている人なら(そんな奴いるのか?)、どうせ「覗き」の反社会性を優等生ぶって話す訳ないな、っていう予測というか期待をある程度持ってくれていると思うが、まさにそのとおりだ(笑)。
だって性的嗜好なんて正々堂々と人前で話せる奴の方が逆に人間としておかしいんであって、単に「おっぱい星人」とか「足フェチ」とか言ってたって、ちょっとつっこむと「おいおい、そんな細かいとこが重要なのかよ(笑)。」っていう理解不能な嗜好をみんな持ってるし、持ってないと思っている連中はそれに気づいていないだけなのだ。
別に田代の性的嗜好が「覗き」であっても別にどうってことあるまい。

世の中には「覗きマニア」など腐るほどいる。

知ってる人もいると思うが、「ジェイド」っていう覗き専門のインディーズビデオメーカがちょっと前に摘発された。
何故か新作がその後も店頭に並んでるような気がするが、まあそんなことはどうでもいいや。
とにかくジェイド以外にも同系列の「スラム」「フロントライン」、隣のアパートシリーズの「WINK」、覗きマニアからの投稿ビデオを販売している「オートネット」、本当の盗撮かやらせかは置いといて、他にも覗き専門メーカはうじゃうじゃ存在する。
そしてそれらのビデオは大抵1万円前後、下手すると2万円という高額なものがほとんどであり、実際それを購入してくれる固定客が存在するおかげで、それらビデオメーカも存在し得るのである。

他人の生活を覗き見るという行為自体、非常に陰湿な印象を受けることから、覗きマニア自体が反社会的な存在として捉えられがちだが、じゃあ「ザーメンマニア」は豪快だから反社会的じゃないのか、「手こきマニア」はブームになったからいいものの、そもそも手に興奮を覚えること自体変態の極みじゃないのか。

そもそも性的嗜好なんてどこか暗い部分を持っているものだ。
しかもそれは人生経験によって大きく左右されるものであるし、本人が欲する欲しないに関わらず形成されるものである。
また出家でもしない限り性欲という煩悩を自分の力で打ち克つことは不可能である。

だから「性的嗜好そのものを否定してはいけない」。

極端な例で言えば、「死体フェチ」という人種も少数ではあるが存在しているのだ。
もっと究極では「殺人マニア」、それと対極にある「自殺マニア」。
彼らは死体フェチになるために努力したわけではない。
「たまたま死体を見てしまった」或いは「人が死ぬ瞬間を見てしまった」に違いないのだ。
そしてそれによって「性的興奮を覚えた」ことにショックを受けたに違いないのだ。
彼らは好き好んでそういった性的嗜好を持ったわけではないのだ。
性的嗜好そのものを否定することは、その人そのものを否定することになる。

反社会的な、或いは公序良俗に反する性的嗜好を持ってしまったことを責める権利は誰にも無い。
しかも反社会的かどうかのボーダーラインはどこなのか、公序良俗に反するかどうかのボーダーラインはどこなのかは、人それぞれ判断が違うし、国によっても判断は異なる。
実際現代では10代のセックスなど経験していない人を探すほうが大変だと思うが、未だに多くの地方公共団体では淫行に対する条例が存在する。
まあ幼女にしか性的興奮を覚えない人は別にして、10代、というか女子高生にしか性的興奮を覚えないという人はかなりの人数いると思うが、彼らは反社会的なのかと言われると私は反社会的では無いと思う。
しかし法律で罰せられる以上反社会的な性的嗜好と考える人も多いわけで、そういう人々から見れば彼らは否定すべき変態野郎どもであるに違いない。

勘違いしてもらっては困るが、私は田代まさしを擁護しているわけではない。
田代まさしが既に社会から逸脱してしまったのは紛れも無い事実だ。

なぜなら彼は「彼岸に」行ってしまったからである。

性的嗜好と実際それを「やって」しまうかどうかは全く違うのだ。
殺人に性的興奮を覚えた人間も、手足を切断された女を犯すことにしか性的興奮を覚えない人も、少女を監禁してペットのように育てることを夢見る人も、それを実行に移してしまったら最後「人間では無くなってしまう」ことを十分過ぎる程知っているし、知っていればこそ悩み、漫画やビデオや小説にのめり込んで行く。
そして、そこで欲望を昇華させることで辛うじて人間であることのバランスを保っているのだ。
漫画やビデオで我慢できればぎりぎり「此岸の」住人である。

しかし一握りは沸き上がる欲求を抑えきれずに実行に移してしまう。
そう、彼岸へ旅立ってしまうのだ。

覗き行為自体は、その陰湿なイメージに反し刑法上は軽微な犯罪である。
覗きビデオなど、殺人ビデオに比べたら容易に手に入るではないか。
バーチャルな興奮で我慢できれば此岸の住人でいれたものを・・・。

一度彼岸に行ってしまったら二度と帰って来れないんだよ。

(2001.12.24)